
今まで何を見てたんだろう(2)
(つづき)
そして予約当日のことです。
クロトワ課長と一緒に会社を出て、とりとめもない話をしながら電車で移動しました。
お店に到着して中に入る時、なんとクロトワ課長が私のためにドアを開けて待ってくれたりするではありませんか。目の前に狭い階段があるかと思えばスッと身を引いて私を先に通してくれるし。こ、これはまさかのレディー・ファーストというやつでは。。。
ちょ!?このひと、こんなに紳士だったっけ??Σ(゚Д゚)
そして予約席に着席し、ちょっとグルメな横文字のメニューを一緒に見ていたとき、
「トベさん、食べたいもの何でも頼んでいいからね。俺、今晩は予算に上限を設けないつもりだから」
うっそおおおおおーーーーー!!!!Σ(゚皿゚)
いまなんつった!?予算に上限なし??
あなた誰!?本当にクロトワ課長ですか!?まるで別人なんですけど!!!
私がいままで何年もかけて観察してきたクロトワ課長ってのは、もっとこう意地悪でケチで、こんなこと絶対にあり得なかったのに!大丈夫か私?なんか突然別の時空に迷い込んだりしてないか?いまにも目が覚めて「これは夢でした」みたいなオチだったりしないか?(((゚゚Д゚゚)))
。。。なんか、あまりのギャップに呆然としつつも、私のなかで今までクロトワ課長に対して築いてきた鉄壁のダメンズ像(なんだそれは)が、目の前で崩壊していくのを感じつつありました。。。
*****
そんな紳士バージョンのクロトワ課長との会話は、夜遅くまで飽きることなく盛り上がりました。何しろ彼とは8年分の付き合いがあるにも関わらず、1対1で話すのはこれが初めてだったので。
私は、タケノコさんの素晴らしい調整能力に何度も助けられたことや、エースのお兄さんのコンピュータのように天才的な処理能力、新人ちゃんが最近とても頼もしくなってきた事などを詳細な事例つきで次々に話しました。それを熱心に聞いていたクロトワ課長がぽつりと一言、
「トベさんは本当によく周りを見てたんだな。俺は鈍いから、みんなのそういう特技とか良さのことを全然気づいてなかったよ。もっとみんなのこと、ちゃんと見なきゃなー。。。」
あー、そうだったのか。。。なんかそれでやっと分かった気がする。
クロトワ課長って一見すれば切れ者で如才なく振舞うタイプに見えるけど、じつは人の性格や得手不得手を察知できないのが弱点だったんだなあ。だから適材適所ができずに圧力で勝負してたのか。。。
でも、そんな彼も、私が病気で倒れて苦しい思いをしていた時は、特例の時短を認める(① ②)など親身に対応してくれたのです。あの頃、派遣としてクビになってもおかしくなかった私を全力で助けてくれたいきさつは2017年夏ごろに綴った通りです。何より入院する時に招き猫をプレゼントしてくれた時の感動は今でも忘れられません。
あの頃のピンチを救ってくれた事についてお礼を述べたら、意外な答えが返ってきました。
「じつは当時、美人部長とトベさんの処遇について話してて、派遣ではなく正社員にできないかという話もしたんだ…(以下略)」
え?正社員?そんな話あったんだ?まあ、部署の乏しい予算から考えて真面目に検討した訳じゃないのは分かってるけど、それでも正社員化の話がチラッと出たという事を知ったのは驚きでした。たとえ冗談だとしても、そんな風に大切に思ってくれたという話を聞けただけで幸せです。ありがとう。(*’∀’*)
「ああ、もっと早くにトベさんとこうして話をしていれば良かったなあ。でも俺、トベさんに嫌われちゃったなーとか思ったりして、いろいろ怖かったんだよ」
「私こそ、いままで何度も噛みついたりして本当にすみませんでした。。。あのう、もし良かったら、この先もたまに連絡とったりしませんか?」
「えっ!本当に!?いいの?」(゚o゚)
「もちろんです!!これからも宜しくお願いします!」(≧∀≦)
よかったーー、もうこれっきりで最後かと思ってたよ〜、あははは。。。とクロトワ課長が笑顔を見せてくれたとき、目の前にいる彼が、なぜかムカつく上司ではなく長年の友達のように思えました。そしてそのとき、私のなかで何かがすっかり入れ替わったような気がしたのでした。
私、この8年間でいったい何を見てたんだろう。
いままでさんざんクロトワ課長にプリプリして悪口ばかり言ってたけど、いったい何にそんなに腹を立てていたのかな?なんかもう、全部どうでも良くなっちゃった。。。
何がそんなに嫌だったのか、もうぜんぜん思い出せないし、この先もずっと思い出せないままでいいや。。。
今までのことは、きっとぜんぶ、おかしな夢だったんでしょう。
ちょっと、覚めるのに時間かかっちゃったけどね。笑
(やっぱり夢オチかい!)
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